DDS製剤

DDS製剤

こんにちは。

今日は化学blogをやっていこうと思います。

今日は患者に優しい製剤を作るための工夫(DDS)について話していこうと思います。

この工夫は、薬物を標的作用部位だけに、必要な時間だけ、必要な量だけ送り届けることを目標にしたものです。例えば、現時点では腫瘍細胞だけでなく、正常細胞にも殺細胞的に作用する抗がん剤の場合、患者の腫瘍細胞のみに腫瘍細胞が死滅するのに必要な量だけ、薬物を送り込むということです。このデリバリーが完璧に実現した時、いわゆる薬の副作用はほとんどが解消されるといっても過言ではありません。今日では、新しい薬を作るのではなく、既存の薬をよりよく使うための工夫が色々とおこなわれているのです。

 

しかしながら、もっとも簡単な投与方法である経口投与において、腸から吸収された薬物は基本的に全身を循環されますし、吸収される量と速度を精密に一定にすることは同じ人間であっても難しいです。

この困難な課題に対して開発された技術(DDS)は現在、①放出制御、②標的指向化、③吸収改善の3つに大別されます。この中で1番に開発されたのは、①放出制御の技術でした。薬をコーティングすることなどにより、製剤からの薬物放出を制御し、徐放性製剤や腸溶性製剤が開発されました。これらの進歩により、薬物吸収性の向上、投与回数の減少が達成されたことで、服薬コンプライアンスの向上につながり、今日言われている「患者に優しい製剤」の原点になりました。

 

最近では、がん、炎症などの病巣部位に特異的に薬物を送り込む、②標的指向化の研究がDDSの中心になっています。また、薬物が投与部位から循環血中に移行する吸収過程の障壁を改善する③吸収改善についても研究されています。

 

近年では、研究により実用化されたDDS製剤が薬物治療の質の向上に大きく貢献しています。

 

 

新しいものを開発することももちろん素晴らしいことですが、研究が進んだ現代では新しいものを作ることは難しいです。また、新しいと実用化までの時間もかかります。しかし、このようにもともとあるものを工夫によって使うことで、患者のQOL向上にも早く貢献することができます。高齢社会により、以前より、健康と疾患の境界が長くなり、薬に頼っていく人がどんどん増えると予想されます。飲みやすく、より少ない回数で効果が出る薬を研究すれば、より安全で精神的にも負担の少ない生活を送ることができます。