体内のpHの調整
- 2020.07.16
- 化学
こんにちは。
前回の化学のblogで呼吸とはなんだ、という話をしましたが、今日はそれに関係している疾患のお話です。このような疾患のことを換気障害といいますが、皆さんに1番馴染みのあるものには、過呼吸があると思います。2018年に新橋駅で女子高生が7人過呼吸により倒れるというニュースがありました。生徒たちは遠足の帰りで、駅が集合場所だったが、一部の生徒が集合時間に遅れて教員に怒られているときに連鎖的に具合が悪くなったとされています。
過呼吸は誰にでも起こり得る状態ですが、身体にとっては危ない状態になってしまう原因になるのです。
このことを説明する前にまず、体内の酸性と塩基性について話していきます。正常な血液のpHは7.40±0.05とされていて、生命を維持できる範囲は6.8~8.0ととても狭い範囲です。この数値が7.35以下でアシドーシス、7.45以上でアルカローシスと言われます。なぜこんなにも狭い範囲で調整されているのでしょうか。体内の酵素はタンパク質なので、pHが大きく変わると酵素が変化して働けなくなるからです。
この酸性と塩基性のバランスは肺と腎臓によって調整しています。
H2O+CO2→H2CO3→H+ +HCO3-
この式を見てわかるように、CO2が増えると結果的に水素イオンが多くなります。また、この式は可逆的です。この矢印通りで働くと呼吸性になります。CO2は肺から排泄されますが、呼吸機能が低下すると、息を吐き出すことが苦しくなり、体内にCO2がたまります。そして、水素イオンが多くなるので体内のpHが酸性に傾きます。これが呼吸性アシドーシスです。反対に先ほど紹介したニュースの過呼吸は呼吸性アルカローシスを導きます。息を過剰に吐き出してしまうと体内のCO2がどんどん排泄されていくため、水素イオン濃度も減り、体内のpHが塩基性に傾くのです。過呼吸は、強い不安や緊張、またはパニック障害の発作などで引き起こされます。ニュースの場合は教員に叱られたストレスにより引き起こされたものだと考えられます。
肺気腫、喘息、COPD、肺炎、肺水腫は呼吸性アシドーシスを引き起こすリスクファクターになり、過換気症候群、いわゆる過呼吸は呼吸性アルカローシスのリスクファクターになると言われています。
最初に述べたように、血液のpHはとても狭い範囲で制御されています。過呼吸の状態が長く続くと身体に大きな影響が出てしまうことがわかっていただけたでしょうか。
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