割と身近な徐放性製剤

割と身近な徐放性製剤

こんにちは。

 

今日の化学blogは薬の放出制御について話していこうと思います。放出制御製剤は、薬物血中濃度を適切な範囲に維持できるため、投与回数を減少させて患者アドヒアランスを改善できます。この放出制御機構は、マトリックスや高分子の拡散の利用、イオン交換物質や浸透圧を利用するものがあります。

 

製剤には、即放性製剤と放出調節製剤があります。前者は、いわゆる普通の薬のことで、有効成分の放出になんの工夫をしていません。それに対して放出調節製剤は、薬物の放出を様々な方法で目的に合うように工夫をした製剤で、腸溶性製剤や徐放性製剤を含んでいます。徐放性製剤のメリットとしては、薬物血中濃度を治療域内に長時間維持することができます。そのため、薬物治療の効率化、投与回数並びに有害作用の軽減を達成できます。しかし、生体内半減期が短く、消化管の全域にわたって吸収性を示す薬物である必要があります。

 

代表的な放出制御にはマトリックス型、膜制御型、イオン交換型、浸透圧型などがあります。

マトリックス型放出制御は、マトリックス(主に高分子物質の塊)の中に、薬物を分散あるいは溶解して、そのマトリックス中での薬物の溶解速度と拡散速度が律速となります。マトリックス内では、薬物は自由に動くことができないため、製剤の中心に近い薬物ほど放出に時間がかかります。

不溶性膜制御型放出制御は、リザーバーの薬物が不溶性の膜の中を拡散する過程が律速になります。この製剤の膜の内部では、薬物は自由に動けます。そのため、膜中のみ動きが制御されるため、放出に必要な時間はどの薬物も同じです。

イオン交換型放出制御は、不溶性のイオン交換樹脂に薬物をイオン結合で吸着させ、消化管内に投与すると徐々にイオン交換されて薬物が放出されます。

最後に、浸透圧型放出制御は、半透膜に覆われた薬物貯蔵層に水が浸透し、浸透圧上昇剤が膨張し、薬物が押し出される仕組みです。

 

 

このように色々な工夫をして、なるべく薬を飲む回数を減らしたり、血中濃度を安定させ、安全に飲むことができる仕組みがあります。普段飲んでいる薬もその1つかもしれません。「新コンタックは朝服用!」のキャッチコピーのコンタックも実はこの製剤なんですよ。身の回りの薬を気にしてみると面白いかもしれません。