臓器移植の難しさ

臓器移植の難しさ

こんにちは。

今日は臓器提供について話していこうと思います。

 

我が国に限らず、臓器を必要としている患者(レシピエント)に対して、臓器を提供する人(ドナー)の人数は大幅に足りていません。もちろん心臓など、提供する状況が限られてしまうものが足りないのはわかりますが、他の臓器が足りないのはなぜなのでしょう。その答えは拒絶反応にあります。

 

基本的にドナーの移植片はレシピエントに拒絶されて生着しません。これを拒絶反応といいますが、これはなぜ起きるのでしょうか。大きな理由として、HLAハプロタイプ、ABO式血液型、マイナー抗原の不一致があげられます。今回はこの中でも、HLAハプロタイプについて話していこうと思います。

 

移植片の生着を左右する遺伝子として、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)というものがあり、ヒトではHLAと呼ばれています。この実態は、抗原提示を担うたんぱく質です。抗原提示をされると、そのされたものは体内で異物と認識され、自分の免疫から攻撃を受けてしまいます。ヒトはHLAを6種類×2(染色体数)=12種類のHLAを発現していて、それぞれのHLAは多数の多型があるため、異なる人同士で全HLAの組み合わせ(HLAハプロタイプ)が全く同じである可能性は非常に低いです。他人間、夫婦間でのHLAハプロタイプの一致率は数百~数万人に1人、親子間では半分一致しますが、完全一致の可能性は低いです。兄弟間では4分の1の確率で一致します。例外として、一卵性双生児は100%の確率で一致します。

 

では、このようにHLAハプロタイプが一致するのは難しいですが、一致しなかった場合どのようなことが起こるのでしょうか。

HLAハプロタイプの異なる移植を行うと、ドナーの細胞に発現している、レシピエントとは異なる配列のHLAがレシピエントのT細胞によって異物と認識されます。レシピエントのT細胞は直接、ドナーのHLAを認識して、免疫を活性化し、ドナーの組織を攻撃します。また、B細胞も活性化することで、抗体を作り、さらにドナーの細胞を攻撃します。このようにして、体から異物であるドナーの移植片を追い出そうとしてしまうのです。

 

こうなってくると、こんなにも一致率の低いのだから、臓器移植は行えないのではないかと思いますよね。

実は医療の発展により、臓器によっては完全に一致していなくても移植は行えるのです。皮膚や骨髄は完全一致が必要ですが、腎臓、肝臓、心臓はハプロタイプが不一致でも行います。

 

これを可能にしているのが免疫抑制剤です。レシピエントの免疫を抑制することによって拒絶反応を起こりにくくしているのです。しかし、この薬は一生飲み続けていかないといけなく、感染症のリスクを抱えることになります。

 

 

免許証や保険証の裏を見てみて下さい。もし自分の大切な人が臓器を必要としていたら?そうなった時に考えるのでは遅いのです。もし自分が臓器を提供できる立場になったのなら?その時自分で意見を言える状態ではないかもしれません。もしそうなった時に自分はどうしたいのかは、早めに考えておいたほうがいいのです。提供するという決断も、しないという決断も、どちらも間違えではありません。どちらが良いというわけではなく、決めておくことが大切なのです。