お薬は着せ替え人形!?

お薬は着せ替え人形!?

こんにちは。

私たちが日常的に飲んでいるお薬は、実は私たちの体により効率よく効くために様々な工夫がされているのです。

今回はその工夫を化学的な面からみていきたいと思います。

 

 

皆さんは「プロドラッグ」という言葉を聞いたことはありますか?

プロドラッグとは、体内で代謝されてから作用を及ぼすタイプの薬のことです。高い薬理活性をもつ化合物でも、投与した後消化管内や肝臓で分解され、最終的に体内中の有効成分が、かなり少なくなってしまう場合があります。そこで、体内あるいは目標部位に到達してから薬理活性をもつ化合物に変換され、薬理効果を発揮するように化学的に修飾された薬がプロドラッグです。消化管吸収性、組織移行性、組織選択性、化学的安定性などの向上を期待して作られています。

たとえば,脂溶性の増加を期待してカルボン酸をエステル化したプロドラッグは、経口投与されると、腸管壁から吸収され、腸管壁内、血漿中、そして肝のエステラーゼにより加水分解され代謝活性化される。この薬物の例として、カンデサルタンシレキセチルがあります。これは経口投与される降圧薬で、親薬物であるカンデサルタンのカルボン酸部分に疎水性のシレキセチル基がエステル結合した構造になっています。このシレキセチル基を付けたことにより、分子全体の脂溶性を大きく増強し、消化管吸収の向上を目的としたプロドラッグであると考えられます。なんだか着せ替え人形をしているようで楽しいですね。

カンデサルタン

 

また、よく馴染みのあるお薬では、ロキソニンがあげられます。

ロキソニンの主成分は「ロキソプロフェンナトリウム水和物」といいます。このお薬は、最初にロキソニンSという名前で発売されました。その後、各社がロキソプロフェンに様々な成分を配合して新しい製品を投入してきました。 ロキソプロフェンを使った市販薬と言っても、実は目的に合わせて様々な種類のものが販売されています。ロキソプロフェンナトリウム水和物は「プロドラッグ」と言われるタイプの薬で、胃に入ってきた段階では痛み止めとしての効果を持っていません。飲み込んで血液中に吸収されて、肝臓で代謝を受けて活性体に変化して薬としての仕事を始めます。では、なぜすぐに効果のある形でお薬にしないのでしょうか。

痛み止めは、痛みを和らげてくれますが、胃粘膜を傷つけてしまいます。もしロキソニンを飲んですぐ効果のある形にしてしまうと、痛みを止めるどころか、胃で炎症が起きてしまいます。その点、プロドラッグという形だと、胃に入った時点では効果がないので、比較的胃に優しいお薬となるのです。もちろん全く胃への障害がないというわけではありませんが、他の痛み止めと比べて優しい構造になっています。

 

 

このように私たちが飲んでいるお薬は、なるべく体に優しく、しかし効果が出るように構造されているのです。とっても素敵で面白い仕組みをしていますね。